【総評】

写真道展は61回展という新しい希望と期待をになって、その扉を開くことになりました。今回の応募者は461名で、出品点数は、第1部(自由)2,149点、第2部(観光・産業)1,323点、第3部(ネイチャーフォト)2,231点の計5,703点と膨大な数になり、まさに壮大な北海道のパノラマを見る思いでした。27名の審査員で第1次から6次まで、2日間にわたって厳正に審査にあたりました。
 第1部は、題材が自由な部門ですから多様な内容の作品が集まりました。これまで発表のなかった素材にも新たな美の光を当てた作品も寄せられました。写真は対象を巨視化したり微視化したりアングルを工夫することなどで、撮影者の意図や意識がより明確になり、そのテーマに説得力が生まれます。長い伝統を有する写真道展には、ある種の傾向があるかもしれません。しかし、そこからの解放を願うことで、ひとりひとりのより主知的で独自性のある写真の創造が誕生するのです。
 第2部は北海道の産業に視点を当てた作品を期待して審査にあたりました。それは北の大地で懸命に働く人々の汗や涙、歓喜の笑みには限りない人間の尊厳が宿っているからです。しかし、残念ながら今年も観光に焦点を合わせた作品が多数でした。全体的にこの部門の出品作には話題性を感じます。
 第3部は、三部門の中では最も出品数が多く、北海道の豊かな自然を捉えた輝きに満ちた作品が目を引きました。ただ、題材が道東に片寄っているきらいがあます。もっと幅広くモチーフを求めてほしいものです。従来オオワシ、熊、鹿、丹頂鶴など北海道ならではの野生動物の写真が多数出品されていましたが、今回はさまざまな自然現象に目を向けた写真や四季折々の風景を捉えた秀作が多く印象的でした。この変化に今後注目していきたいと思います。
 以上、61回展の3部門の出品傾向をあげてみましたが、全体的に写真の作品化や仕上げが上手になり、洗練されてきています。反面、画面から飛び出さんばかりの迫力のある、個性的な作品が減少しているように感じました。
 入賞・入選者194名の内、女性は3割弱を占めています。これまで写真は男世界のものと言われてきましたが、近年女性の進出が特筆されます。厳寒の中、男性でも大変な重装備で撮影した作品も多く見られ、更なる躍進が楽しみです。
最近の写真はシャッターを押すだけの操作で簡単に撮れる安易さがありますが、そのことは同時に、撮影者独自の美意識の如何が問われるのです。今回展の入賞・入選作のいずれも撮影の意図が明確で審査員に訴えるに十分な内容のものでした。61回展を機に、写真道展に出品するためだけの写真制作にとどまることなく、日々レンズを通して自らの感性を磨き、豊かな内面から発した作品の創造を期待します。

審査委員長 中野 潤子

01年、月刊「日本フォトコンテスト」誌ネイチャー部門月例年度賞1位。個展「間のオト」を99年に札幌で開催。その後。東京、大阪等でも個展を開く。北海道写真協会写真道展審査会員。札幌市在住

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第1部(自由)
一席 文部科学大臣賞・第61回写真道展大賞 久留嶋 誠悦(苫小牧市) 祝の日
二席 北海道知事賞 金沢 俊美(美唄市) 老舗
二席 北海道教育委員会教育長賞 小泉 和子(小樽市) 初雪
二席 北海道新聞社賞 今  明美(札幌市) 都心のオアシス
二席 道新文化センター賞 塚田 信孝(函館市) 独居生活
三席   裏 征子(札幌市) 素敵な散歩道
三席   大崎祐美子(新得町) おやすみ
三席   鎌田 美智(札幌市) 愛犬も祝福
三席   髙橋 省三(小樽市) 風に向って
三席   壬生由美子(苫小牧市) もうすぐ会えるね
三席   安田 敏彦(札幌市) 潜降開始
三席   山本 隆晟(江別市) 剛気

(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)

第2部(観光・産業)
一席 国土交通大臣賞 岡部 静枝(江別市) 魚群を見詰める
二席 札幌市長賞 輪島 礼子(札幌市) おじいさんと一緒
二席 道新観光賞 池田 政人(旭川市) たのしい動物園
三席   大野加珠枝(札幌市) 子供達と「とわ」
三席   千葉 逸子(名寄市) 新緑のころ
三席   真壁 英治(札幌市) 勢い余って
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)
第3部(ネーチャーフォト)
一席 環境大臣賞 武田 礼子(札幌市) 狙いを定めて
二席 北海道写真協会賞 岡部 静枝(江別市) 氷彩
二席 富士フイルム賞 山形 典夫(札幌市) UFO
二席 北海道新聞野生生物基金賞 小林 正輔(根室市) 薄日差す
三席   佐藤 繁雅(旭川市) 寒い朝
三席   中神由美子(札幌市) 強く美しく
三席   保科 俊一(函館市) 悠久のモニュメント
三席   山下 支朗(恵庭市) 厳寒の川
(クリックするとpdfで入選者名と作品名が閲覧できます)

【展覧会】

 公募作品展:5月15日(木)から20日(火)

 審査会員・会友作品展:5月22日(木)から27日(火)

 開催時間:10:00-19:00 最終日は17:00まで

 開催場所:道新ぎゃらりー

      札幌市中央区大通西3 道新ビル1階  

【巡回展日程】上記以降各地位の巡回展を行います。日程はこちらから